DENON AH-D7200 でハイレゾを聴き倒す | ヘッドホン

初聴はもっと感動するものかと思っていたけど、音が靄っていたせいか全域的にボヤっとしてバランスが悪いなとも感じたのも杞憂に過ぎなかった。エージングも進み耳慣れしてきたら、強調されていた低音のアタックも落ち着き良いバランスに。低音はやや主張するけど、中高音が埋もれるわけでもなく、素晴らしい音を聴かせてくれるようになった。

AH-D7200 / HD-AMP1 

DENON AH-D7200 -Reference Over-Ear Headphones-

オーディオ環境

環境としては、マランツのHD-AMP1でゲインは3段階の真ん中にして、ハイレゾ音源 (一部SACD) をそんなにデカくない音で聴く。マランツとデノンの組み合わせだけど、この相性は悪くなし。DSD256は何タイトルかあるものの、ソニーのHAP-S1をミュージックサーバー代わりにしていて、接続仕様上の関係でDSD128までしか出力できないので、DSD256で聴きたいときは別から出力。現在650あるタイトルの内、クラシック 5 : ジャズ 3 : ロック/ポップ他 2 といった割合。

AH-D7200の方向性

AH-D7200は、明瞭キレ味鋭い音を欲する人には無縁。傾向はエッジの立った音とは違い程良くウォーム。かといってキレがないのとはちょっと違い、やわらかい音でもしっかり聴かせてくれる。低音は現代志向で、余韻を楽しむというよりは締まった感じ。ベース音も小気味よい。ハイレゾ音源でいうと、どちらかと言えばPCMよりDSDのほうがマッチするかも。言われるように音場は密閉型にしては広め。バランスがよくどの帯域も引っ込みは少なく、低音の主張はあるものの定位がいいので音は捉えやすい。

ジャンル別レビュー

いくつか挙げると、クラシックのオーケストラものから、Jaap Van Zweden指揮の “Bruckner: Symphony No.8” [DSD128] は良質な録音をそのまま活かし、金管も耳につかない程度にしっかり鳴らしてくれる。Ivan Fischerの “Stravinsky: The Rite of Spring” [DSD64] もキレがあり、同じく一連のMahlerのDSDはハイレゾのレンジの広さの優位性を再確認させてくれる。ピアノソロだと “Arcadi Volodos plays Brahms” [96kHz/24bit]。ピアノ曲の小品118−2では、エッジのやわらかさを活かし暖かい音色。Isabelle Faustの “Schubert: Oktett” [96/24] ではピリオド楽器の響きを見事に再現。古楽器にもマッチし、室内楽はそれほど聴かない自分も聴き入ってしまった。

ジャズでは定番のMiles Davisの “Kind of Blue” [DSD64] は音が澄んだ代わりに、出だしのホーンがハモるあたりのノイズはやや押さえ込んだ感あり。同タイトルの192kHz/24bitの音源のほうがAH-D7200向きかもしれない。ロックだとおとなしめになりそうなギターも、John Scofield の “Combo 66” [96/24] などのジャズ系ギターにはマッチしそう。Chris Potter Underground の “Imaginary Cities” [88.2/24] でのポッターのテナーの響きは心地よすぎ。Anouar Brahemの “Blue Maqams” [96/24] あたりのECM系の音は合いそう。

Denon AH-D7200 headphone Denon AH-D7200 headphone
ヘッドホンスタンドは木製より合皮のほうがアタりが柔らかそうなのと、本体に負担が掛からなそうな曲線で幅もパット部がハミでない10cmということで、エレコムのKuaL AV-HDSEO2(2色有)を購入。

ヴォーカルでは、Diana Krallの “Turn Up the Quiet” [DSD128] が、スピーカーで刺さり気味だった声も綺麗に澄んだ音で鳴らしてくれるけど、囁くような息づかいはやや減退。”Ella and Louis” [DSD64] では、サッチモのトランペットソロがくるまで、これが50年以上前の録音だとは思えない。ハイレゾでも古い録音のピアノ系は結構苦労するけど、そのあたりもなだらかにしてくれる。ベタにMichael Bubleの “love” [96/24] では、ビッグバンドのホーンセクションが懐かしさを醸し出し、ヴォーカルも艶っぽい。Sabine Devieilheのフレンチアリア集 “Mirages” [96/24]。François-Xavier Roth 率いる Les Sieclesをバックに、透き通ったソプラノに惚れ惚れ。

ロック/ポップ他からは、Muse の “Simulation Theory” [96/24] は、ギターの角を少し削ったことが却って彼らのサウンドにマッチしている。Steven Wilsonの “To the Bone” [96/24] などはさすがのミックスバランスをそのまま伝えてくれる。打ち込み系のJamiroquaiの “Automaton” [96/24] は、ベースの前に出すぎ感が増すものの及第点。Panic at the Discoの “Pray for the Wicked” [96/24] はスピーカーよりハイハットあたりの高音がザラつく。ロック/ポップ系では新しめの音源でも、スピーカーでは感じない安っぽさがあったり、粗さが不自然だったり、満足感が少ないものもあった。このあたりはエッジが立つクリア系の開放型ヘッドホンか、デノンならAH-D9200AH-D5200に任せたほうがいいのかも。

DENON AH-D7200 まとめ

以上、未聴の音源も多いけどまずはこんなところ。当たり前だけど、結局はハイレゾを活かせた音源ほどAH-D7200の良さが出て、悪い音源はそこまでごまかしてはくれない。忠実に近づけばそんなもの。オーディオよりは音楽寄りで聴いているほうだけど、それでも手持ちのクラシックのハイレゾなんかは21世紀に入ってから録音された音源がほとんど。まぁ良質な音に慣れると仕方なし。これくらいのシンプルなシステムと予算で、これだけの音を聴けるなんて、いい時代になったもんだ。(一番お金のかかるのは音源だけど…) 初めに大きなインパクトはなかったけど、じわじわ実感する飽きのこない良音。購入して後悔のない買いモノだった。。。

今回の買いモノ満足度 →